海くんたちは拓ちゃんと同じ寮らしく、寮の中でバイバイをした。

 寮から出た時、私はあることを思い出す。

 そ、そういえば、私、男子寮だったんだった……!

 あの寮は生徒会専用寮だし、理事長からは内密にって釘をさされているから、女子寮に送ってもらおう!

 拓ちゃんと別れてから、寮に戻らないと怪しまれちゃうっ……。

 拓ちゃんに嘘をつくのは心が痛むけど、こればっかりは仕方ない。

 女子寮は、拓ちゃんたちの寮から見える位置にあった。

 短い道を歩きながら、他愛もない話をする。



「疲れたか?」

「ううん! 今日1日とっても楽しかったよ」

「そっか……俺も、由姫といられて楽しかった」



 恥ずかしそうに言ってくれる拓ちゃんに、私も自然と笑みが溢れる。



「ふふっ、これからは毎日会えるね」

「うん……まだ実感わかない」



 拓ちゃんはそう言って、少しの間黙り込んだ。