電車を降り、タクシーでイザベラス学園に連れて行ってもらうことにした。イザベラス学園は山の中にある。周囲からは孤立した学校だ。

「ここが、イザベラス学園……」

駅から一時間近くの場所に、山の木々に隠れるようにその学園は建っていた。赤レンガの美しい校舎だ。

校舎に入る前に、胸ポケットに盗聴器とカメラを隠す。鏡で確認しても違和感はどこにもない。

立派な校門のベルを鳴らすと、深緑の上品なロングワンピースを着た女性が姿を見せる。歳はたぶん、三十代前半くらいかな。

「お話は聞いています。留学生の胡桃沢和香さんですね?」

「はい!日本から来ました。よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げると、女性は淑女を育てる学校に相応わしい上品な笑みを浮かべる。

「私はここで楽器を教えています。名前はメアリです。ミス・胡桃沢、よろしくお願いします」

メアリ先生に早速校舎内を案内され、寮の部屋も決まった。なんと、ハティーさんと同じ部屋だ。

「ハティーさん、私が今日から潜入調査をします」