ナツ君の優しいとこ、全然変わってない。こんなんじゃ、どんどん切なくなる。
でもその日いつもより早く仕事から帰ってきたナツ君はクタクタで、力尽きてソファまで辿り着けなかった。
「おにぎり全然残んなかった。5個しか食えてないのに。ポケットの2個だって……もう無理」
「それだけ食べたら充分じゃない? ラーメンも食べたんでしょ」
そう聞いたら食べてないって。こんな空腹じゃ寝れないって返事が返ってきた。
だから翌日むくまないように、薄目のお出汁でうどんを作った。
その分とろろこんぶは少し多めに入れてあげよう。
これくらいしか、してあげられることないし。それにこんな質素な夜食でいいのかな?
「はぁ、マジしみる……これを食べるために今日も頑張った」
大したものじゃないのにいつも美味しそうに食べてしっかりごちそうさましてくれるから、そんな不安もなくなった。
「そういえば今日麻凛になんか言われた?」
どきっ。
気付かれるわけにはいかないのに。
「別に何も、ないよ」
「ならいいけど、何かあったらちゃんと言えよ。あー見えて、きついとこあるから」
「うんわかった。ありがとう」
何度か共演してるし、麻凛ちゃんのことは公私ともによく知ってるんだ。
彼女の失態は、彼氏のナツ君がびしっとしつけとくから……みたいなことか。
でももう麻凛ちゃんのことは全部忘れて、今はナツ君の喜ぶ顔だけ見てたい。
女の子扱いされなくても、雑用係でも、役に立ててるならそれだけで嬉しい。
もしかしたら都合のいい女の子って、こんなふうに量産されていくのかな。
だけどナツ君を意識しないなんて、もう無理。この先ずっと片想い決定だ。



