「冷えてきたからあっちで暖とった方がいいよ」
「うんっ。一佳君、一緒にご飯食べよ?」
麻凛ちゃんは上目遣いでとびきりの笑顔を見せた。
お互いに名前呼び。
二人は特別な関係なんだからそんなの当然なんだけど実感したくなかったな。
どこに視線を向けたらいいのかもわからないくらい、居心地が悪い。
こんなキラキラな二人に挟まれているなんて、まるでお仕置きみたい。デートで浮かれてた過去の自分が可哀想になってきた。
「あの、気の効かない差し入れ持ってきちゃったから全部持って帰りますね」
こんなんじゃナツ君の評判だって落ちてしまう。
差し入れもセンスを問われるって知ってたけど、温かいものなんて思いつきもしなかった。
テーブルの上のおにぎりを全部、早くどこかに隠してしまいたい。
だけどナツ君は麻凛ちゃんじゃなく、うろたえている私の方を見て薄く笑った。
その顔が(何も心配ないから俺に任せて)
そう言ってるように見えたのは、小学生の時、教室の花瓶を倒して床を水浸しにした私に見せてくれた顔と一緒だったから。
あの時ナツ君は、すぐ雑巾を持ってきて床を拭いてくれた。
『当番俺だし、ついでに掃除も済んでラッキー』
そう言って場の空気を和ませてくれたんだ。



