麻凛ちゃんは急に私を壁際に引っ張っていって、小声で囁いた。
「もう! これから麻凛の控え室で内緒のデートだって知ってるくせに」
「な、なんのことですか?」
「うそ……まだ知らなかった?」
麻凛ちゃんは少し顔を赤らめた。
「……私たち、付き合ってるの」
恥じらいながらさらに小声でそういわれて、気が遠くなった。そのまま倒れてしまうんじゃないかと思った。
二人が付き合ってたなんて。
ショックすぎて、瞬きも呼吸すらもできなくなった。
「なかなか会える場所がないから表向きは打ち合わせってことにして2人きりになれる時間をお互い工夫して作ってるんだよ」
「……そうだったんですね」
麻凛ちゃんの言葉に、幸せだった気持ちも時間も、全て切り裂かれたような気分になった。
「バレたら大変だから、紗知ちゃんも私たちが付き合ってるってことは秘密にしててね。これは暗黙の了解ってやつだから、一佳君に確認するのもダメだよ」
「はい、わかりました」
私を解放した麻凛ちゃんは、幸せそうにコーヒーのカプセルを2つ、マシーンにセットした。



