「それならよかったけど、時間も時間だからちょっと送るのが難しそうで……」
時計を見てびっくり。
終電なんかとっくに終わってる。
「ほんとにごめんね。お姉ちゃんに迎えに……」
ダメだ。お姉ちゃんは匠君と温泉旅行だった。
「今片桐さんがホテル探してくれてるからちょっと待ってて」
お水を手渡してくれて、片桐さんと電話で話し始めた。
スツールに座ってこっちに背中を向けてる。舞台挨拶のときの衣装はとっくに脱いだんだね。
オフホワイトに黒ラインのトラックトップに着替えてる。
芸能人て、なんでジャージまでおしゃれに着こなせるんだろう。
見失いたくなくて、勝手においかけている背中がすぐそこ。
こんなに近いのに、手を伸ばしたってたぶんもう届かない。
それにナツ君て好きな人以外にはドライなんだね。今知った、悲しい事実。



