どうにか席までは辿り着きたい。
それなのになんだかめまいがしてきた。
「あ、これ……まずい、かも」
壁にもたれたまま、床にへたり込んでしまった。お薬、いつ効くの?
「紗知?……どうした?」
ぼんやり意識が遠退いていく。
ナツ君の声が聞こえた気がした。
幻聴かな。
だとしても嬉しい。
ナツ君の優しい声、近くでもっとずっと聞いていたかったな。
「大丈夫か?」
軽々と持ち上げられて、ふわふわと体が揺れた。
誰かが助けてくれたんだ。
ご迷惑おかけしてすみません、ありがとうございます。
お手間じゃなければ席まで運んでください。やっぱりどうしても映画観たいんです。
なんて言う気力、まったく残ってなかった。



