「紗知の気持ちはわかるけど、それって理想論じゃん。 なんでもクールに完璧に周りを気遣って……キラキラしてなきゃ俺じゃないとでも思ってんだ?」
「そうじゃないけど、そんなナツ君に救われてる人がいっぱいいるのはほんとだよ」
「じゃあ紗知の気持ちはどこにあんの?」
答えられずにいたら、ナツ君は乾いたため息をついた。
「それって頑張ってる俺しか好きじゃないって言ってんのと同じだよ」
ぴったりくっついてた体を離して、私の頰を優しく包む。
「そっか。俺が紗知を思うのと、紗知が俺を思う気持ちって、やっぱりどっかずれてんのかもな」
ダメだ、涙を止められない。
「そうだよ、だって私たちは芸能人と一般人だもん。ナツ君に私の気持ちなんかわかるわけない」
「それ、マジで言ってんの」
こくん、と頷く。
「ネットで騒がれるなんて想像もしなかったから、巻き込み事故に遭ったみたい。ナツ君は慣れてるのかもしれないけど、普通に暮らしてた私はしんどいんだよ」
そう言ったらナツ君は静かにため息をついた。
「そっか。ごめん」
たぶんもう涙は拭ってもらえない。
「案外こういうもんなんだ、すげー唐突」
大きな温かい手が、そっと離れていった。
「いいよ、そんなに辛いなら別れよう」
自分は言えないくせに、ナツ君に言わせてしまった。ずっと待っていて、絶対に聞きたくなかった言葉。



