「電話出ていいよ。ご飯の準備しとくね」
エレベーターを降りると急いで玄関の鍵を開けた。話を聞かれたくないだろうし、私も聞きたくない。
笑顔ひきつってなかったかな。
とにかく今は早くナツ君から離れたい。
だって顔なんかとてもじゃないけど見れそうにないし、自分がどんな顔になっちゃうかもわからない。
だけどナツ君は、いつまでも鳴り続けてる着信を拒否した。
「なんで切っちゃうの?」
びっくりして、まだかたっぽ靴を履いたまま。
「木崎麻凛に興味ないから」
何を言ってるんだろう。
麻凛ちゃんからの電話をいつもこんなふうに無視してるの?
信じられない。
「さっきの相馬君のことで私に気を遣ってくれるのは嬉しいけど、優先するべきなのはどんな時も彼女の麻凛ちゃんでしょ? 電話を無視するなんてあり得ない、ナツ君ひどい!」
実際麻凛ちゃんを存在に扱うところを見たら、怒りすら込み上げてきた。
「だったら俺が優先しなきゃいけないのはやっぱ紗知じゃん。紗知しか見てないってなんでわかんないの?」
靴箱の上に投げ出したスマホがまた鳴り始めると、ナツ君は今度は迷いなく電源を切ってしまった。
私もまだ靴を片方履いたまま。
何が起こってるのかよくわからなくて固まってる。



