「相馬君の勝手な意地で振り回さないでよ。やっぱり私のこと、好きなんかじゃないよね」
「だからこそこっち側に引っ張りたくなるんだよ。こういう所で二人きりなんて、隠れてちょっといけないことをしてる気分になるでしょ? 小松さんもこれで悪い子の仲間入りだから」
耳元には危ない誘い。
壁に追い詰められて身動きが取れない。悪びれない笑顔がじりじりと近づいてくる。
「不安そうな顔、かわいいね」
みんなこの整った顔と甘い言葉のせいで拒否できなかったのかな。
「そういうのもうやめて」
腕を突っ張って相馬君を押し退けようとしても、男の子の力にはかなわない。
こっちに有無を言わせないような、圧倒的な差に愕然としてしまった。
でもそれで《強引だ、わがままだ、自分勝手すぎる》って頭に来ていたはずのナツ君は全然そうじゃなかったってことに気がついた。



