その夜、お姉ちゃんは匠君とデートからのお泊まり。
ナツ君は深夜から早朝にかけての撮影でホテル泊になったから、誰にも顔を合わせずにすんだ。
でも翌朝泣き腫らしたひどい顔で登校したら蘭ちゃんが血相を変えて私のもとに走ってきた。
「何があったの? その顔どうしたのよ?」
また泣きそうになって、鼻声で昨夜の撮影現場でキスシーンを見てしまったことを話したら、蘭ちゃんは静かに頭を撫でてくれた。
「実際目にしたらショックだったの。見るなら映画館で作品として観たかったよ。私ね、知らない間にナツ君のこと、すごく好きになってたみたい」
想像以上のショックを受けたことを、ひとりでは抱えきれそうになかった。
それに最初から、どうしようもない片想いなんだ。
だってあの二人は付き合ってるんだもん。このことを蘭ちゃんに言えないのだってつらい。
だからお昼休み、寒くて誰も寄り付かない凍ったベンチで泣き言を言ったのに、蘭ちゃんはなぜか慰めてくれなかった。



