「え…?」
ためらわずに彼女のもとへ足を進めようとした時
高見くんに腕をつかまれ、わたしの頭はフリーズする。
「あっ悪い!結構強く掴んじまったっ」
「ううん、どうし――…」
どうしたの、と言いかけた瞬間
教室がわっとにぎやかになったのが分かった。
「佐伯さん、手伝う」
「あ…、ありがとう…」
「ちょっと見た今の!?千尋くんがひなに!!」
「見た見た!かっこよすぎてヤバかったぁ」
「…白石さんが良ければ、千尋のこと応援してやって」
背伸びして黒板上部を消そうと頑張るひなの後ろから
彼女の小さな手に大きな手を重ねるようにして黒板消しを取ると、何事もなかったかのように黒板を消す碓氷くんの姿があった。