――…鋭く、濁すことなく言葉を投げかけてきたのは伊織のお父さんだった。
「父さんの言う通りです。…紗和さんと話をして、先日復縁しました」
「…。白石さん、うちの伊織が紗和ちゃんに悲しい思いをさせたようで――…」
「っとんでもない、紗和が至らないばかりに、成瀬さんにはいつもご迷惑をおかけしておりまして――…」
始まった“大人の会話”を、わたしも伊織もまっすぐに見つめる。
それでも伊織は一歩前に出て、引く様子は微塵も見られなかった。
「父さん、皆さん。僕らふたりの未熟さゆえ、紗和さんとの交際が学校中に知れ渡ってしまいました。約束を果たせず、大変申し訳ございません」
「っ、申し訳ございません…!」
伊織の声に、再び注目が集まる。
「伊織くん、原因は君ではなくて紗和だろう?」