父は病院だからか、声を荒らげることもなく落ち着いていた。


…ただその声色は冷たくて、無に等しくて

いつも感情的な父だからこそ、余計に怖さを増した。



「野木先生に聞いた。…伊織くんが何から何までやってくれたそうだな」

「……はい…」

「まったく…」



――…目をぎゅっと瞑る。


これなら怒られたほうがマシだ。

こんな背後から何かに襲われると知っていて待っているような、身体が震えだす感情に覆われて。



「状態が安定するまで入院。退院後はしばらく自宅療養だ」

「っ!」

「うちに連れて帰るから、そのつもりでいるように」


「……。

…はい…っ」



驚くほど冷たく落ちる声色の掬い方を、わたしはまだ知らずにいた。