“破ったら特に罰があるとか、そういうわけではない。けれど、ふたりの覚悟を見たい”


…伊織のお父さんがそう言って、伊織は一度目を伏せたのち了承した。わたしもしっかりとうなずいたのだった。

罰があるとかそういうわけではない。でも、ばれるなと言われた以上それを忠実に守るプライドがわたしと伊織にあることを、きっと大人たちは見透かしていた。


…中学でももちろん付き合っていることは誰にも言わなかった。ただのクラスメイトとして接し続けていた。

一年間という十分な期間とともに勉強して、無事明凛学院に入学した。

明凛学院には寮があるけれど、母と伊織のお母さんが気を利かせてオートロックのマンションに隣同士で部屋を借りてくれたのだ。


…そう。だから厳密には同居しているわけではない。でも毎日伊織はわたしの家に入り浸っているので、ほとんど一緒に住んでいるようなものである。


でも、外に一歩出たら、ただのクラスメイトだ。

わたしは委員長。伊織は頭脳明晰で人気者の男子。


卒業するまでそれは絶対に守ろうと、ふたりで約束した。