四時間目の現代文。

…集中できるはずもなく、ぼんやりと教科書に視線を落とした。



今日の朝、伊織の家に行って

再度インターホンを鳴らしたものの彼が出てくることはなかった。

…合鍵は持っているけれど、今の状態で勝手に入ったらそれこそダメな気がして。


沈んだ気持ちで学校に行くと、彼はチャイムが鳴る寸前に教室に入ってきた。


思い切って、「成瀬くん、おはよう」と

――…言おうとしたわたしを待っていたのは、最初からわたしがいないかのような彼の目。


わたしを視界に映すこともなく、空気のようにして、クラスメイトと話を始めていた。



…もう、無理なのかな。

苦々しい感情を咀嚼する能力は、まだわたしには備わっていなかった。