「……た、かみ…くん…?」

「…本当はちゃんと、学校で告うつもりだった」



うっすら聞こえる街中の喧騒を置いて

わたしと高見くんの時と足は、止まっている。

まばらに歩く人はそんなわたしたちを見向きもしなかった。



「…なん…で、」

「俺、白石さんに惹かれてる。…こんな時に言うなよっていうのは分かってるけど、俺のこと意識してほしい」



…高見くんが

わたしのことを


――…好き。



「送るよ、って言いたいけど…。…家はこの辺?」

「……うん、そこのマンション…」

「そっか、なら大丈夫だな。…とりあえず中に入るのだけ見送らせて」

「………っ…、」

「何もしないって、本当に。…ただ心配なんだ、好きだから」

「高見くん、わたし…っ」

「あ、待った。返事はこれからの俺を見てからにして」



そう言って切なく笑った彼に

わたしは感情が追い付かないまま、ふらふらと歩いた。



足にはやっと歩けるくらいの、力だけを携えて。