――…その言葉は

今のわたしの心臓をえぐるのには、十分だった。



「……ないよ」

「え…?」

「っわたしだって伊織が分かんないよ!!」



…だめ、

ちゃんと落ち着いて話すべきことなのに

ちゃんと、考えて、言葉にすべき大事なことなのに



「服部先生との話聞いたよ。…大好きな希帆ちゃんじゃなくて妹なんだって言えば良かったじゃない」

「――っ!!!」

「希帆彼氏いるからね、わたし身代わりになれた?」

「っ違う、身代わりなんて…」

「じゃあなに?希帆とつながりを持つための道具?」

「…紗和、」



真っ黒でいびつな感情が

堰を切ったようにあふれて、止まらなくて



「大っ嫌い」



――…わたしは、家を飛び出した。

振り払った手は、冷え切っていた。