(……うそ、だ) ――…立ち尽くしたのち、しゃがみ込んで 震える手を一生懸命さすりながら首を振った。 “紗和” あの声は、 あの顔は、 あの愛は、 全部、わたしへじゃなかったというの。 「やっぱり。その話覚えてたんだ」 「当たり前じゃない、あれだけ何度も話してくれたらね。結婚するんだーって意気込んでしょう」 ――…伊織が否定しなかったのが、答えなのだと思った。 (…行こう) 伊織。 あなたも、希帆を見ていたの。