…昨日、伊織に抱かれているときの記憶が朧気だ。

負の感情ばかりが心の中に引っかかって、わたしは無理やり伊織を繋ぎとめてしまっているのかな、なんて考えてしまって。

けれどそんなわたしの不安さえも包み込むように、彼が優しく抱いてくれたことだけはしっかりと覚えている。



「伊織くんおはよう、眠そうだね?」

「…んー、まぁね」



気だるげに、興味なさそうにわたしとひなの少し先を歩く伊織。

伊織の横には碓氷くんがいて、ひなの顔をちらっと見たら彼のことを目で追っているようだった。


…高見くんは…、まだ来てないのかな。姿が見えない。



「委員長、ひな、おっはよっ」