「...ってことがあってさ、那奈はどう思う?」

家の近くのファミレス。
私達が集まるのはいつものこの場所。

「んー、優香の彼氏が浮気してるとは考えれないけどなあ」

そう、今日は親友である優香の相談に乗るために来ている。
どうやら、彼氏が浮気をしているかもしれないとのことだった。

「優香もそう思うんだけど、行動が怪しくって。ほんとに浮気してたらどうしよう」

「一回直接聞いてみたら?」

「そんな勇気あったら那奈に相談してないよ〜」

優香はギャルっぽい見た目とは裏腹にとても純粋で可愛い子だ。
男運がないのか、ダメ男ばかりに引っかかり切ない恋を多く経験している。
今回の彼氏は付き合って半年経つから長く続くと思ったのだけど。

「とりあえず様子見でいく...。彼氏のことまだ信じたいし」

「まだ確信があるわけじゃないもんね」

「うん。ってか那奈は最近どうなの〜」

思わず言葉が詰まってしまった。

「あれ?もしかしてなんかあった?」

「なんかあったわけじゃないけど...」

むしろ、何もない。
彼氏と喧嘩したわけでも、彼氏が浮気したわけでも、彼氏の悪いところを見つけたわけでもなんでもない。淡々と過ぎていく毎日。

「何もないのになんでそんな浮かない顔なのさ〜」

「諒太とこのまま付き合って結婚して、ずっと一緒にいるのかーと思ったらなんか、ね」

この感情を言葉にするのは難しかった。今の生活に刺激が欲しいと言えばそうなのだけれど。

「諒太さんいい人じゃん〜」

「それはそうなんだけど...」

「那奈、高望みは厳禁よ!」

そう言って優香は席を立った。ドリンクバーに行ったのだろう。

高望み、か。
イケメンと付き合いたいとは思わないし、付き合えるとも思わない。
この心にぽっかり空いた何かを何が埋めてくれるのだろうか。