だが、1980年頃、急にルービックキューブ

という名の知的おもちゃ製品が大ヒットを

遂げ、世間の子供が次々に夢中になってい

った。

秀樹も、その1人だった。

毎日、寝る間を惜しんでやるくらい、みる

みるうちに上手くなった。こんなに好きな

物を今まで知らないくらい、部屋にこもっ

て打ち込んでいた。

それと同時に、夜に1人で泣いている事も

なくなっていったのだ。

今まで、親でありながら、秀樹の事を「か

わいそうに、、」としか思えず、生きる希

望を与えてやれなかった康則は、その楽し

そうな息子を見られるのが、嬉しかった。

そう、流行りに乗ってると、息子も今時の

若い子達と同じなのだ、とも思えた。

時には、康則も一緒に競争した。

誕生日やクリスマスには新しいタイプのも

買ってあげた。

前までの毎日を、ルービックキューブとい

う物が変えてくれたのだ。

そう思うと、どんな小さい会社でも、「こ

の仕事をしていて良かった」と思えた。