そんなことがあったにもかかわらず、キミはネット社会の鉄則を守ろうとはしなかった。


しかし、以前よりは多少誤魔化すようにはなった。その一例がもう既にダンス部を辞めているにもかかわらず、ダンス部であると言ったことだ。


何しろ説明がめんどくさい。こうこうこうでこういうことがあって、それで辞めたなんて話、誰が聞きたいだろうか。


本当は17歳であること、福岡に住んでいることも言わない方がよかったのかもしれない。そうすれば、キミは完全に現実世界と幻想世界を行き来することができた。


中途半端になってしまったのだ。だから、キミは放課後、一人で帰りながらもあの男のことを考えている。


「すべて嘘ならよかったのに」


ふとそんなことを呟いた。でもすぐに首を振って、


「あの人が現実だったらよかったのに」


これこそがキミの本音なのだ。