「……帰るか」
その言葉に頷くと、詩優は歩き出す。
私は彼の後をついていく。
その後ろ姿がなんだか、悲しそうに見える。
…いつもと違う。
それに、いつもより歩くのが早くて。
小走りで詩優を追う私。
…いつもゆっくり歩いてくれていたのは、きっと私に合わせてくれていたんだろう。
それでも、少し早く歩く時は……私の手を取って歩いてくれる。
優しい詩優。
なんて思っていたらドンッとぶつかった。
「…ごめん」
ぶつかった人は詩優で。
急に立ち止まったみたい。
それからくるりと詩優は後ろを向いて、
「……やっぱ無理。誰にもチョコ渡すな…」
熱い手でぎゅっと強く手を握られた。



