詩優はなぜか数秒間動きを止めて。
それから、パンっ!!と自分で自分の頬を強く叩いていた。
「!?」
あまりにも急な行動だったからびっくり。
かなり強く叩いていたから痛そうだ……。
詩優は数回深呼吸を繰り返してから
「…チョコ、守れなくてごめんな。誰かに渡すつもりだったんだろ?」
今度は辛そうな表情へと変わる彼。
「……あのチョコは…」
“みんなに渡したかったの”
最後まで言うのをやめてしまった私。
渡すものが何もなくなってしまった今、わざわざ言わなくてもいいような気がしてしまったから……。
不自然に言葉を切ってしまったから、慌てて
「助けてくれてありがとう…!!チョコはまたつくるから大丈夫!!」
さっきのお礼と、大丈夫だということを伝えた。
「…おう。今度は渡せるといいな」
そう言った詩優の声は少し低くて。
やっぱり表情も暗いまま。



