数秒後に聞こえてきたのは倫也の笑い声だった。あっははははっ!と大笑い。
「黙れ、倫也。早く退散するぞ」
竜二さんが倫也の首根っこを掴んで、引きずってこの場を去っていく。
残されたのは私と詩優の2人。
詩優は私と向き合って
ごしごし、と私の頬を自分のワイシャツの袖で拭く。
「…嫌だったよな、ごめん」
そこで私はつい数秒前のことを思い出す。
柔らかいものが頬に触れた…、あの瞬間を。
あれって、もしかして。
もしかしなくても…
き、き、キス…だよね!?
今さら恥ずかしくなってきて、顔が熱くなっていく。
思い出すだけでも恥ずかしくて……
全然嫌なんかじゃない。
「……嫌じゃない、よ」
小さな声になってしまったけど、しっかり伝えた。
目の前の詩優に。



