そのチョコタルトは、雷龍のみんなに…詩優に渡したくてつくったの。
詩優にバレないように材料を買って、バレないようにつくるのは大変だったけど……。初めてつくったチョコタルトはすごくよくできたんだ。
味見もしたから……
ちゃんと美味しいよ。
みんなに渡すか迷ったけど……
渡したかった。
ちゃんとみんなに、
詩優に
お礼がしたかったの。いつもお世話になってるから。
「……返して……返してよ…」
ただ悔しくて、ぽたりと涙がこぼれ落ちた。
「妃芽乃ちゃん、泣かないでよ」
金髪男が私へと手を伸ばす。
怖くて、体が動かなくなって……私はぎゅっと目を瞑った。
その時────



