「誘拐されたらどうすんだよ。
餌付けなら俺がいくらでもやるから。だから他の男に懐いてんじゃねぇ」
詩優の右手が私の頬へと伸びてきて。
温かい……熱い手が私の頬に触れた。
ドキドキと心臓が暴れ出す。
「俺にだけ懐いて」
目の前の彼が優しく微笑む。
瞬間、ドキン!と大きく心臓が跳ねた。
“誘拐されないよ”とか、“懐いてなんてないよ”とか…言いたいことはたくさんあったけど……ドキドキしすぎて声を出す余裕すらなかった私は、ただ詩優と目を合わせていた。
「今日はもう帰ろ。これ以上お前がここにいたらまじで危ねぇし。それに、風邪ひくから帰って風呂入って体温めてろ」
詩優は私の返事を待たずに手を引いて保健室を出る。
その時、ちょうど
キーンコンカーンコーン
授業終了のチャイムが校舎に鳴り響いた。



