ホテルのエントランスを抜けると暖かい風と眩しい光


微かに聴こえるクラッシックを耳にしながら


ロビー正面のラウンジに向かった


22時近いせいか人も疎らで


私のブーツの音がコツコツ響いてる気がした


もう少し早い時間だと生演奏もあったりする上品なラウンジ


入り口に立った私にすぐさま気づいて声をかけるスタッフ


「お待ち合わせですか」


………待ってるのかな?


『…えっと…』


私らしくなく口ごもりきっと困った顔でもしたんだろう


少し後ろに下がって手を軽く前に出し


「ごゆっくりどうぞ」


それだけ言って頭を下げた


アッ…訳ありって思われた


実際おおっぴらな関係ではないけど


こういうホテルではよくあるのかも


社員教育の一環で「お客様のプライバシーに関わらない」とか(笑)


バカな事を考えつつゆっくりラウンジに足を踏み入れた


絨毯に足音は吸い込まれ


ムーディーなダウンライトとテーブルの上の蝋燭


くるりと見渡したけど男性独りきりの客なんていない


帰った?


もしくは……今から来るの?


焦ってた気持ちが一気に落ち着いてく


フッ…変なの