私は誠のために一生懸命働く。

そして、仕事復帰から1ヶ月後、新しい機械が導入されるということで、私もその説明とデモンストレーションの見学に参加した。

だけど、そこにいたのは……


優くん!


私は驚いた。

だって、優くんはまだアメリカにいるはず。


なんで!?


でも、そこにいるのは、紛れもなく優くん本人だ。

私は、そっと人だかりの陰に隠れた。

大丈夫。
私は今、全身作業用の白衣に身を包み、帽子で髪を隠し、マスクで顔を隠している。
例え優くんでも、分かるはずがない。

なのに……

「桃… 香?」

全てを終えて立ち去ろうと背中を向けた瞬間、後ろから声を掛けられた。

嘘……

なんで分かるの?


「桃香! 桃香だろ?」

駆け寄った優くんに手首を掴まれる。

「違います」

私は、顔を背けて答えるけれど、優くんは手を離してはくれない。

「嘘()くなよ。
俺が桃香を見間違えるわけないだろ 」

優くんが声を荒げる。

いつも穏やかだった優くん。

こんな風に声を荒げたところなんて見たことない。

「あの… 仕事中だから… 」

私が小さな声で訴えると、優くんははっとしたようにその手を離してくれた。

私はそのままその場を後に事務所へと戻った。

なんで?
なんで、分かるの?
見えてる所なんて、ほとんどないのに。