「ああ、それでいい」

「ふふっ」

「なに笑ってんだよ」

「なんだかいいなぁと思って」

「はぁ?」

わけがわからないと言いたげに眉を寄せる晴くんに、私は笑いが止まらなかった。

「バーカ……」

頭を小突かれグリグリされても、そしてその顔がプイとそっぽを向いても、いつまでもいつまでも晴くんの横顔を見つめ続けた。

そしたらほんのり赤くなって、根負けしたのかこちらに視線を向けてくる。

ぎこちない表情の彼と目が合うと、最後に晴くんはやっぱり笑ってくれた。

「ま、ひまが笑ってるならそれでいいけど」

そんなふうに言ってくれる晴くんがすごく好き。

「あのさ、ラブラブなとこ悪いけど俺の存在感なさすぎじゃない?」

通路を挟んだ反対側から天地くんが身を乗り出してむくれ顔を覗かせた。

「わ、いたんだ」

「うぉーい! いたんだって……ひまりちゃん、ひどい……」

「わー、ごめんね」

しゅんと肩を落とす天地くんに慌ててフォローする。

「ほっとけよ、そんなヤツ」

「晴〜、おまえ友情より彼女を取んのかよ!」

「マジで黙れ」

「なんだとー?」

か、彼女……!?

ふたりのやり取りが頭に入ってこない。

私、晴くんの彼女じゃないのに晴くんは否定しないで淡々としている。