「だからね……『大丈夫』って言葉が無意識に出てきちゃうんだと思う」

大丈夫、私は大丈夫。そうやっていつも自分に言い聞かせてきた。私が笑っているとお父さんも笑ってくれる。だから、笑顔でいなきゃいけない。

日向くんに向かってニッコリ笑うと、強く腕を引かれた。

「きゃ」

スッポリ覆われる私の身体。火がついたみたいに、一気に体温が上昇していく。

キツく抱きしめられて苦しい、息ができないよ……。

「ひゅ、うが、くん……」

途切れ途切れになりながら絞り出した声。日向くんは私の肩に顔を埋めた。

ドキンドキンと高鳴る鼓動。意識が全部日向くんに持っていかれる。

「俺、なんもわかってなかった……気軽に言ってごめん」

「ううん……謝らないで」

やっぱり色んな気持ちにさせられる。だってほら日向くんの腕はこんなにも温かくて……ドキドキが止まらない。触れた部分から日向くんの優しさが伝わってくる。

「俺の前では無理する必要ないから」

「…………」

「そのままの桃咲が、好きだ。だから、俺の前では無理すんな。ツラいことがあったら言え。誰にも遠慮する必要ないから」

「……っ」

後頭部を撫でてくれる大きな手のひら。泣きたくなんかないのに涙があふれた。

「あり、がとう。私……」

本当は誰かにこんなふうに言ってほしかったのかもしれない。

目の前が涙でにじんだ。まばたきすると大粒の涙が頬に流れて、次から次にあふれ出してくる。

日向くんはなにも言わずにただ黙ったまま私の頭を撫で続けてくれた。