唯一落ち着けるのは自分の部屋だけ。ひとりになるとホッとする。

特に予定はなかったけど、着替えて外に出た。行き先は森林公園だ。苑ちゃんはきっと部活だろうし、こんなときとっさに連絡して遊ぶような友達もいない。

「はぁ……」

どんより曇る空を見てため息を吐いた。

『こいつは俺のだから』

『手ぇ出すな』

『軽い気持ちなんかじゃねーよ』

『真面目、だから』

頭の中をぐるぐるとそんな言葉がかけ巡る。

目を閉じると浮かんでくるのは日向くんの照れたような顔。

どういう意味で言ったのかな。本気で言ったんだとしたら、日向くんは私を好きってこと……?

いやいや、ないでしょ。友達として言ってるだけだ。うん、絶対にそう。だから期待しちゃダメ。

あのときは動揺してつい『友達でいたい』なんて言っちゃったけど、本当はすごくうれしかった。

思い出すだけで顔から湯気が出そうなほど熱い。

芝生広場のベンチに座ってぼんやりしていると、ポケットに入れていたスマホが鳴った。

母親からのメッセージだ。

『ひまちゃんの好きなケーキ買って帰るからね!』

私もそれに『ありがとう』と返す。

こんなやり取りに意味なんてあるのかな。

だってこの人は本当のお母さんじゃない。私のお母さんはひとりだけだから。