「ちょっとお兄ちゃん! あたしのプリン食べたでしょ!」

夜、リビングにいると妹が鬼のような形相で詰め寄ってきた。中二だけど大人びていて見た目は高校生。でも中身は生意気でかなりのワガママ。それはもう幼稚園児並み。

一番下の特権で父親に果てしなく甘やかされて育ったせいだ。

「何日も前からあったから、いらないのかと思って」

「そんなわけないじゃん。今すぐ買ってきてよ〜! 楽しみにしてたんだからね!」

「はぁ?」

「は、や、く! 男のくせに甘い物が好きとか引くんだけど!」

ああ、うざい。生意気すぎる。べつにいいだろ、甘い物が好きだって。

「だいたいね、お兄ちゃんは毎日なんの目的もなくダラダラ生きすぎなの! もっとしっかりしてよ!」

「それ、プリンと関係ないだろ……?」

プリン食ったぐらいで生き方を否定される俺って……。

「とにかく、早く買ってきてよ! 今すぐね」

そう言われてしぶしぶ家を出た。いつもより少し遠いスーパーにチャリで向かう。

すぐそばのコンビニにだって売ってるプリンなのに、わざわざ遠いスーパーに行くってバカみたいだ。

それでも桃咲の顔が浮かんで仕方ないから、会えるかもわからないのにチャリを漕いだ。