手のひらの感触に胸がじんわり温かくなる。不思議と日向くんの手は安心するんだ。

「ねぇ、どういうこと? 付き合ってるの?」

「ま、まさか! そんなわけないよ!」

「でもいい感じだったよね?」

「……っ」

「日向くんは噂されてるような人じゃないの? 喧嘩が強いとか、年上の彼女がいるとか」

「噂は噂だよ。優しい人、だから」

出会った経緯を一から説明すると、しぶしぶだけど苑ちゃんは納得してくれた。

「ごめんね、今まで言えなくて」

「本当だよー、まさか北央のプリンスと仲良くなってるなんて思わないから!」

「あはは……」

そうだよね、私も仲良くなれるなんて思ってなかった。

「で、付き合うの?」

「な、なに言ってんの! 付き合うわけないからっ!」

「でも好きなんじゃないの?」

「うっ……それは」

「私が見る限りではいい感じだったけどね、あんたたち」

日向くんが私を選んでくれるわけないよ。でも、日向くんの好きな人が私だったらいいのに。

言葉を詰まらせた私に苑ちゃんはフッと笑った。

「ま、がんばりなよ。日向くんだったら許す」

「ふふ、さっきまでとはえらいちがいだね」

「まだ完全に信用したわけじゃないけど」

ありがとう……苑ちゃん。

心強い味方。でもごめんね、今は日向くんが気になって仕方ない。

私はふたりが消えて行った方角をいつまでもいつまでも見つめ続けた。