次の日、悩みに悩んで一本早いバスに乗った。
バスに乗った瞬間、いつもの場所に立つ人物に激しく動揺した。
ドキン。
な、なんで?
「よう」
どうして日向くんがいるの?
眠たそうに目をトロンとさせて寝癖がついた髪を触っている。見上げた横顔は、どことなくバツが悪そう。
「お、おはよう」
混雑しているので会話はあまりできない。でも私は隣に立つ日向くんから目が離せなかった。
並んで立っているだけでドキドキして落ち着かない。
キキィ。
バスがカーブを曲がる瞬間、前に立っていた人にぶつかられて手すりから手が離れてしまった。
「きゃ」
身体が大きく揺さぶられ小さく悲鳴を上げる。するとその瞬間、腰に腕が回されたかと思うと、私の身体を日向くんが力強く支えてくれる。
「ご、ごめんねっ」
恥ずかしくてとっさに離れようとしたけれど、足元が揺れてうまく立っていられない。
密着しすぎていて日向くんの顔がすぐそばにある。キリッとした横顔は、他の誰よりもとてもカッコいい。
「つかまってろよ」
「だ、大丈夫だから……!」
だってね、これ以上密着してたらおかしくなりそうだから。
今日だって本当は会いたかった。だけど彼女の顔がちらついて胸が苦しくて……会いたくなかった。それなのに会うとドキドキしてるなんてすごく矛盾してる。



