月曜日、どんな顔で会えばいいのかわからなくて、朝はいつもより一本早いバスに乗った。単純だなって自分でも思うけど、日向くんの前でうまく笑える自信がない。
私だけが特別だなんて、そんなふうに思わなくてよかった。とんだカン違いをするとこだったよ。沈んだ気持ちのまま学校へ向かう。
「おはよう、桃咲さん」
「福島くん、おはよう」
教室に着くと福島くんが挨拶してくれて、私は笑顔を貼りつけた。
「なんかあった?」
「え?」
「顔にそう書いてある」
「なにもないよ」
笑ってごまかす。だってこんな話を福島くんにできるわけがない。ううん、誰にも言えないよ。自分でもこのモヤモヤの正体がわからないのに。
「なんかあるなら相談に乗るからいつでも言って。俺、桃咲さんの力になりたいからさ」
さすがクラス委員長。頼りになる発言をしてくれる。だからこそ福島くんはみんなから慕われているんだよね。
「ありがとう、大丈夫だよ。福島くんは委員長の鏡だね」
「え?」
「だってみんなに優しいから」
「…………」
しばらく黙り込んだあと、福島くんはボソッとつぶやいた。
「桃咲さんに対してだけだよ」
え?
ん?
どういう意味?
それになんとなく福島くんの顔が赤いような気がする。
「とにかくなんかあったら遠慮なく言って」
そう念押しすると福島くんはプイと顔をそらして自分の席に戻ってしまった。
なんだったんだろう、今のは。心配してくれているってことかな。