一カ月後──。

バスに乗っていると思い出すひまの笑顔。今でもときどき、ひまの姿を探してしまう。停留所に着くと「晴くん」と笑いながら何事もなかったようにバスに乗ってくるんじゃないかって思うことがある。そして俺の隣に座るんだ。

いなくなったという実感がない。どこかでまだ生きていて、もしかすると笑っているんじゃないかって……。だけど最期の日、俺は自分の手でたしかに冷たくなっていくひまの体温を感じた。

思い出すと胸が張り裂けそうになり、穏やかじゃいられない。あいつの存在がどれだけ大きかったのかを、改めて思い知った。

「晴、おはよう」

「…………」

なにもかも、どうでもいい。笑うことも泣くこともなく、生きてるのに死んでるみたいだ。ひまがいないと意味がない。

ひまが俺のすべてだった。あいつがいれば、それでよかった。それだけで強くなれた。

「おいおい、今日も果てしなく暗い顔してんな」

「関係ないだろ」

「関係あるよ。俺はおまえの親友だぞ?」

「…………」

歩の気遣いは痛いほどわかる。でも今の俺にはそれすらも受け入れる余裕がない。