また話し合おうということで病室に返された。可能性があるなら希望を捨てたくない。でも……。

虚ろな目でぼんやりと天井のシミを眺める。

こうなってみて思うのは、ありきたりな日常がとても幸せだったということ。つい三カ月前まで、私はどこにでもいる普通の女子高生だった。

朝自分の部屋のベッドで目覚めて、お母さんが作ったご飯をもそもそ食べて、かわいい弟にお弁当を渡され、家を出てバスに乗る。そしたらそこには当たり前のように晴くんがいてくれた。授業なんて早く終わってしまえと思いながら、苑ちゃんや美奈ちゃんと笑い合っていた日々が幻のよう。

どうしてこうなってしまったんだろう。なんで私だったんだろう。考えてみたって、やっぱり答えなんか出ない。

「ひま」

「!?」

どれくらいボーッとしていたのかはわからない。気づくと晴くんが不思議そうにベッドにいる私の顔を覗きこんでいた。

もうすっかり見慣れたニット帽。鼻の頭が赤くて、今日も相変わらず寒そう。

落ち込んでちゃいけない。私に元気がないと晴くんが悲しむ。いつものようにパイプ椅子に座って、ベッドの中の私の手を握ってくれる氷みたいに冷たい晴くんの手。

「冷たいね」

「ひまはあったかい」

「ずっと寝てたから」

「そっか」

いつまでもずっと、晴くんとこうして手をつないでいたい。

「なんかあったのか? 手が震えてる」

「晴くんの手が冷たいからじゃない?」

「なにその理論」

「あはは」

どれだけツラくても、晴くんといると笑顔になれた。