湧き上がる罪悪感。言ってはいけない最低な言葉を私は……言ったのに。
「ひまちゃん」
「なに……?」
「ちょっと昔話をするわね」
そう前置きをしてから、母親は深呼吸をひとつ。そして神妙な面持ちで口を開いた。
「私とお父さんが再婚するとき、あなたをひと目見てすぐにわかったわ。私は歓迎されてないって。ひまちゃんは笑ってたけど、そういうのってなんとなくわかるでしょ?」
なにも言い返せなかった。図星だったからだ。
「でもそれでもよかった。だって私にはひまちゃんの気持ちが痛いほどわかったから」
母親の横顔は悲しげだった。でも笑っている。それはウソ偽りのない笑顔だ。
いきなりなにを言うの。
「私の育ての親もね、本当の母親じゃないの。私が六歳のときに、突然亡くなったの。病気だったわ」
「そう、なの……?」
知らなかった。まさか、同じ境遇だったなんて。でも母親の母、私にとっては祖母だけれど、ふたりはとても仲がよかった。赤の他人だったなんてウソみたい。
「父が再婚したのは私が六年生のとき。嫌だったわ、そりゃね。だから反対した。でもやっぱり最後には父の幸せを願って再婚を受け入れたの。いつまでも母だと認めることはできなかったけどね」
肩をすくめて笑った顔が無理をしているように見えた。新しい母親を認められない気持ちは、私にもわかる。
「でも、母は私にも洋子叔母さんにも分け隔てなく平等に接した。差別されたことなんてひとつもなかった」



