「同情、しないでよ! いつもいつもいつも、そんな目で私を見てっ! かわいそうだなんて、思われたくないっ!」

はぁはぁと呼吸が乱れる。同情なんてされたくない。でもこの人はいつも、私をかわいそうだという目で見る。

「そんなつもりじゃないのよ。ただ、ひまちゃんが落ち込んでるように見えたから……親として、なにかしてあげられたらって」

母親の目が戸惑うように揺れる。

「母親面しないでっ! 私のお母さんは、私を産んでくれたたったひとりだけなんだからっ! 本当は──」

ダメ、言うな、私。

心のどこかでそんな声がする。

だけど、止まらなかった。

「再婚なんてしてほしくなかった! 新しい家族なんていらない……お父さんがいれば、それでよかったのに……っ」

そうだよ、それでよかったの。

お母さんが大好きだった。代わりの人なんていらない。ずっとそう思っていた。

泣きたくなんかないのに、じわじわと涙が浮かんだ。これはなんの涙?

喉の奥が焼けるように熱い。

「ごめんね……」

母親はそう言ってズズッと鼻をすすった。わずかに残った良心がチクチクと痛む。だけど気づかないフリをして、布団を頭からかぶった。

「帰って……! もう二度と、こないで……」

キリキリと胃が痛い。「ごめんね」とか細い声がして、母親は静かに病室を去った。