「ごめん、条件反射よ。だって、あなた不良だったから……」
「ふん、悪かったな。いきなり声かけて」
分厚いコートの肩からポニーテールがさらりと流れ落ちる。意志の強そうな瞳、たしかひまの友達の海堂とかいうヤツだ。
「いいよ、私も日向くんと話したいと思ってたから」
「は? え?」
「ここだと、ね? 場所移動しよっか」
「あ、ああ」
わずかに目を見開く俺に、目の前の海堂はどこか悲しげで重苦しい雰囲気を放っている。その姿に妙な違和感を覚えた。
外は木枯らしが吹き荒れ、寒さが増していく。冷たい風に身を震わせながら無言で駅まで歩いた。駅前のハンバーガーショップに入り、飲み物だけを注文して海堂と向かい合う。
奇妙な光景に違和感しかない。どうやって聞こう。こいつは多分、ひまから話を聞いてるはずだよな。もしかしたらひまに頼まれたのかもしれない。
もう関わらないでって言われても仕方のないことをしている自覚はある。店員から受け取ったホットティーを口にしてため息を吐く海堂。
「ひまりのことできたんでしょ?」
知ってるのなら話は早い。俺はゆっくり頷いた。
「やっぱり……日向くんにもなにも言わなかったんだ」



