この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。


「お姉ちゃん、おはよう」

階段をドタバタおりる私に六歳の弟の(あきら)がかわいく笑う。

「おはよう、あきくん」

あきくんは人懐っこくておまけにかわいい顔をしている。頭を撫でるとうれしそうに頬を寄せてきた。

うう、かわいい……。

「お姉ちゃんもう行くの?」

「うん! 食べてる時間ないから」

「はい、お弁当」

「あ」

手にしたランチバッグを笑顔で私に渡してくれるあきくん。私とちがって本当にしっかりしているな。

「ありがとうー、あきくん!」

ランチバッグを受け取りカバンに詰め込み玄関で靴を履く。寝坊なんてめったにしないから、慌ただしい朝は珍しい。

「ひまちゃん、もう行くの?」

リビングのドアが開いて中から母が顔を見せた。なんとなく背筋がピンと伸びて、インプットされているかのように顔に笑みを貼りつける。

笑わなきゃ、いつも笑ってなきゃ。そんなことを思いながら。

「じゃあ、行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」

母は少し戸惑うように笑ってから送り出してくれた。

「お姉ちゃん気をつけてね」

「はーい!」

家族に見送られながらマンションの部屋を出る。父は始発に乗るのでもうすでに家にはいない。うちは普通の四人家族だ。そう……ごくごく普通の。

それでも家にいると息が詰まりそうになるときもある。そんなときは無理して笑う。そうすればたいていはうまくいくから。

家を出ると道路を挟んで大きな森林公園があり緑があふれている。そこを横目に通り過ぎて角を右に曲がるとすぐにバス停が見えてくる。