だから必死に家族のフリをし続けた。
あはは、おかしいな。そんな自分が滑稽で笑えてくる。お父さんのための家族。でも守らなきゃ。大丈夫、私はまだがんばれる。
笑っていられる。
手を繋いで歩く親子連れに胸が痛んでも、母親の腕に抱かれてスヤスヤ眠る子どもを見ても、大丈夫。もう昔のように、お母さんが恋しくなったりはしない。
待ち合わせの駅に着くと、晴くんはすでにきていた。そしてどうやら女の子と一緒のようだ。
あれは、佐々野さん?
遠くから見えるシルエットで彼女だとわかった。ふたりはなにやら話し込んでいる。女子に恐れられていると言ってた晴くんも、佐々野さんには心を開いているような気がする。
お似合いだよね、私なんかよりも佐々野さんのほうがずっと。ふたりは美男美女で、通りすがりの人からの視線が集まっている。
胸の奥がズキッとわずかに痛んだ。なにを話しているのかな、気になるよ。
「ひま!」
ゆっくり近づくと晴くんがいち早く私に気づいた。
「おはよう、晴くん」
「うん、はよ」
「佐々野さんも」
「おはよう!」
朝から佐々野さんの笑顔がまぶしい。近くで見るとより美人で、モテオーラがあふれている。



