噴き出しそうになったとき、キッチンの奥から高校生くらいの店員さんが出てきた。どこか見覚えがあるその子は、私を見てニッコリ微笑む。
「いらっしゃいませ」
「あ、どうも」
「一度会ったよね、ショッピングモールのクレープ屋さんで」
「あ!」
そう言われて思い出した。前に一度会ったことがあるキリッとした美人の女の子。名前はたしか、佐々野さんだったっけ。
「その節はどうも」
「こちらこそ!」
晴くんと同じバイト先だったなんてビックリだ。
「佐々野ちゃんじゃん! ここでバイトしてんの?」
「えへ、そうだよ」
「マジかぁ。俺、毎日通っちゃう」
テーブルに座ってた男子たちが顔を覗かせた。どうやらみんな同じクラスのようで、店内はワイワイと騒がしくなった。
「佐々野ちゃん、今度俺と遊ぼうよ」
「えー、やだよ。私、軽い人嫌いだもん」
「俺軽くないよ? 佐々野ちゃんのこと、ずっとかわいいと思ってたもん」
すごい熱烈アプローチだけど、冗談半分だからなのか佐々野さんも相手にしていない。
おしとやかに見えたけど、意外とズバッと言うんだ。ちょっとだけ苑ちゃんに似てるかも。なんて、あはは。
「おまえら、うるさすぎ」
うんざりしながらため息を吐く晴くん。目が合うと私にだけわかるようにごめんとジェスチャーしてきた。



