君がいればそれだけで。

「心配してんのにあれは無いよな」

「近寄らなかったら寄らなかったであれなのにね」

兵士や召し使いの心無い声がまた聞こえてくる。冗談じゃない。こんな時まで聞きたくない言葉に気を取られてたまるか。
俺は王女の命令を無視し、近付いて背中を擦った。震えながら体を支えている腕に手を添え、何も言わずに宙を見ていた。すると、俺にもたれ掛かるようにして気を失った。
すぐにヒューが駆け付け、症状を見たけれど魔女特有の過労から来る症状らしい。過労のせいで体にある魔力が減少しすぎたために起こる、貧血のような物だそうだ。
症例は様々だが、一度なると七日から一ヶ月は起きないらしい。正気か問いていたからこの事をパルさんに話していた訳じゃないんだろう。