君がいればそれだけで。

扉を挟んで背中合わせになっているフィン様の声が震えていた。きっと、多くの命が犠牲になった事を悔いているんだ。もっと自分に出来る事があったのではないかと。でも、フィン様一人が悔いていても仕方がない。言い方は悪いかもしれないが、終わった事を悔いても過去に戻れる訳じゃないんだ。

「約束よ?ずっとそばにいてよ?」

「当たり前ではありませんか。だってあなたは俺の英雄なんですよ?」

「そう・・・だったわね・・・。うん、そうね。行きましょうか」

「はい。お供致します」

ゆっくりと部屋から出てきたフィン様はどこにでもいる、少しだけ着飾った町娘のようだった。