君がいればそれだけで。

書斎の隠し部屋も見たし、入れ違いにでもなっているのだろうか。それか、フィン様が隠し通路を使っているためにすれ違わないだけか。フィン様の全てを分かっているつもりでいたけれど、どこをどう捜しているかも分からないようじゃまだまだだな。

「ですから、私は大丈夫ですって」

「いや!フィン様も着飾ってくだされ!今日は皆が着飾られるのですよ!」

「しかし、今日の主役は私ではなく」

「フィン様も十分主役ではありませんか!」

客間に使われていた扉を開きかけた時、フィン様の困ったような声と数人の女の声が聞こえた。