君がいればそれだけで。

王女一人が通れるくらいの低い天井のせいで中腰で歩かなきゃいけなかった。でも、今は辛い腰よりも破裂しそうな心臓の方が気になって仕方なかった。愛している王女の手が俺の手を強く握ってくれているんだ。静かであるはずがない。

「あの、王女様」

「パルはさ、何で私を好いてくれるの?」

「王女様は俺の英雄ですから」

恋い焦がれているからなんて言える訳がなかった。一人の女性として愛してしまったなんて言えるはずがなかった。だって俺はまだ一番近くにいる兵士というだけで友達にもなれていなかったから。
英雄という言葉に笑う王女を見て安心している俺がいた。