君がいればそれだけで。

楽しそうに笑い声を上げた正の心だけの王女は薄暗い部屋から出ていった。今ならしっかりと王女を抱き締め、ある程度なら守れるかもしれない。そう思ってほふく前進をし、手を伸ばして肩に触れようとしたその時だった。

「・・・思い出が無くても心の繋がりは消えないんだよ?」

「王女様・・・!」

「愛してくれてありがとう」

意識を失っていたはずの王女は笑った後、立ち上がると足に付いていた鎖を取ってくれた。瀕死になっていた訳じゃない事に安堵したのも束の間。俺を立ち上がらせると手を握って一緒に部屋から出た。
逃げ道はもちろん、王女のみが知る隠し通路だ。